琵琶湖疏水の歴史と魅力:国宝・重要文化財指定の意義

京都市の発展に欠かせない役割を果たしてきた琵琶湖疏水。その施設が、このたび 国宝・重要文化財 に指定されることになりました。この水路は、明治時代の日本において、西洋技術を積極的に取り入れながら構築された都市基盤の一つであり、日本の近代化に大きな影響を与えたものです。

琵琶湖疏水は、明治23年(1890年) に完成しました。当時、京都は東京遷都に伴い衰退の危機に直面していました。その状況を打開し、京都を復活させるために計画されたのが、この琵琶湖疏水です。琵琶湖の水を京都へ供給することで、水道・発電・舟運・灌漑・防火用水などの多目的利用 を可能にし、京都の産業や文化を支える都市基盤としての役割を果たしました。

この度の国の文化審議会による評価では、
「西洋技術の習得過程にあった明治中期において、当時の土木技術の粋を集めて築かれ、世界的に高い評価を得た、類い希なる構造物であり、明治日本における都市基盤施設の金字塔である」
と高い評価を受け、歴史的価値が改めて認められました。

 

国宝・重要文化財に指定される施設

今回、新たに 24か所 の施設が重要文化財に指定され、そのうち 5か所 が国宝に指定されることとなりました。

【国宝指定施設】

  • 第一隧道(京都市・滋賀県大津市)
  • 第二隧道(京都市)
  • 第三隧道(京都市)
  • インクライン(京都市)
  • 南禅寺水路閣(京都市)

特に 「第一隧道」 は、明治時代に建設された国内最長規模のトンネルであり、日本における近代トンネルの規範とされる存在です。また、京都の街を象徴する 南禅寺水路閣 は、赤レンガと石造りの美しい構造が特徴で、景観的にも価値が高いことから国宝に指定されました。

一方、「インクライン」 は、船を陸地で運搬する仕組みを持つ施設で、かつての舟運の重要な役割を果たしていました。こうした構造物が文化財として保護されることで、京都の歴史と技術の伝承がさらに進むことになります。

 

観光船「びわ湖疏水船」

この琵琶湖疏水を 実際に体験 できるのが、観光船「びわ湖疏水船」です。かつて、琵琶湖疏水は舟運によって物資や人の移動を支えていましたが、陸上交通の発展などにより昭和26年に舟運は途絶えました。しかし、平成30年になり約 70年ぶりに観光船として復活 したのです。

琵琶湖疏水船は、春と秋の季節限定で運航されており、明治時代に建設された水路を 船に乗って巡る ことができます。見どころとして、次のようなポイントがあります。

  • 第一隧道(全長2,436m)の通過(日本最長級の近代トンネルを船で移動)
  • 大津閘門の通過(パナマ運河と同じ水位調整の仕組みを体験)
  • 専門ガイドによる解説(疏水の歴史や構造について詳しく学べる)
  • 南禅寺水路閣の眺め(赤レンガ造りの美しいアーチが印象的)

この船旅を通じて、当時の京都の発展に貢献した琵琶湖疏水の歴史を 実際に肌で感じる ことができます。

【乗り場情報】

  • 蹴上乗下船場(京都市)(地下鉄東西線「蹴上駅」徒歩すぐ)
  • 大津乗下船場(滋賀県大津市)(京阪「三井寺駅」徒歩すぐ)
  • 山科乗下船場(京都市山科区)(一部便のみ利用可能)

乗船には 事前予約 が必要で、公式サイトから申し込むことができます。

 

歴史的価値を未来へつなぐ

琵琶湖疏水は、京都の近代化を支えた 都市基盤の象徴 です。今回の文化財指定を機に、その歴史的価値をより深く知り、実際に訪れることで、京都の魅力をより一層感じることができるでしょう。

京都のまちを支えてきた 「希望の水路」 は、今もなお市民の生活の中で活躍し続けています。その役割を未来へとつなぎ、さらに魅力を発信しながら、京都の文化と歴史を守り続けていきたいですね。