南海トラフ地震と富士山噴火:目を背けてはいけない、すぐそこにある複合災害の現実



「いつか来る」と言われる南海トラフ地震。その言葉に、あなたはどれほどの現実味を感じていますか?遠い未来の話、テレビの中の出来事だと、無意識に心のどこかで線を引いていないでしょうか。しかし、政府が公表する最新の被害想定は、もはや「他人事」では済まされない、日本が直面する史上最大の危機が、あなたのすぐそばに迫っていることを明確に示しています。
想定は「最悪」ではない、私たちの想像を超える「現実」
南海トラフ地震が発生した場合、死者最大約30万人という数字は、単なる統計ではありません。それは、あなたの隣人、友人、家族、そしてあなた自身が、その「死者」という項目に数えられる可能性を秘めている、という現実を突きつけます。東日本大震災の10倍以上とも言われる経済被害も、私たちの生活基盤を根底から揺るがすでしょう。
最も差し迫った脅威の一つは、津波です。地震の揺れが収まるか収まらないかのうちに、その巨大な水の壁は到達します。

  • 例えば、和歌山県白浜では最大16メートル、静岡県の一部では30メートル以上という、信じがたい高さの津波が想定されています。これは、一般的な建物の約5階、あるいは10階以上に相当する高さです。
  • しかし、ここで強調すべきは「想定」の先にある「現実」です。東日本大震災では、リアス式海岸の特定の場所で、なんと40メートルを超える津波が実際に陸地を駆け上がりました。これは、あなたのいる場所の13階、あるいはそれ以上の高さまで水が到達したことを意味します。あなたの住む場所、働く場所の「何階まで水が来るのか」を、あなたは本当に具体的に想像したことがありますか?そして、その高さまで安全に、しかも地震直後の混乱の中で、数分以内に避難できるでしょうか?「まさかここまで来ないだろう」という甘い考えは、命取りになります。
    300年前の「悪夢」が示す複合災害の現実
    南海トラフ地震の脅威は、揺れと津波だけにとどまりません。さらに恐ろしいのは、日本の象徴である富士山が、この巨大地震と連動して噴火する可能性です。
    これは荒唐無稽な話ではありません。今から300年以上前、江戸時代の1707年。南海トラフ沿いで起きた巨大地震、通称「宝永地震」(M8.6~9.0と推定される日本最大級の地震)のわずか49日後に、富士山が「宝永噴火」という、歴史上最大規模の噴火を起こした事実があります。
    想像してみてください。大地震による壊滅的な被害から立ち直る間もなく、今度は空から大量の火山灰が降り注ぎ、すべてを覆い尽くすのです。実際に宝永噴火では、遠く江戸(現在の東京)にも2~4cmもの火山灰が降り積もり、農地は壊滅し、人々の生活に長期にわたる深刻な影響を与えました。
    現代にこの複合災害が起きた場合、その影響は計り知れません。
  • 交通網は完全に麻痺し、空港は閉鎖、鉄道や高速道路も寸断されるでしょう。物流は完全に停止し、食料や物資の供給は途絶えます。
  • 電力、水道、通信といったライフラインは長期にわたり停止し、現代社会の機能は根底から揺らぎます。スマホも、水道も、電気も使えない生活が、何週間、何ヶ月と続くかもしれません。
  • 火山灰は呼吸器系の健康被害を引き起こし、目に入れば視覚を奪います。精密機器は故障し、農作物は壊滅的な被害を受け、日本の食料自給率に深刻な打撃を与えるでしょう。
    あなたは、瓦礫と化した街で、ライフラインも通信手段も断たれ、降り積もる火山灰の中で、大切な人を守り抜く自信がありますか?
    「大丈夫だろう」は、あなたから命を奪う最大の敵
    私たちの社会は、戦後の復興から高度経済成長を経て、長きにわたる平和と繁栄を謳歌してきました。しかし、その平和な時間の裏で、私たちは自然災害への危機意識を徐々に希薄にしてしまっているのではないでしょうか。
    歴史は繰り返します。宝永の複合災害は、まさに「平和な時代」の只中に、日本が直面した最大の試練でした。そして今、私たちはその試練と、再び対峙しようとしています。
    「大丈夫だろう」という根拠のない楽観は、私たちから命を奪う最大の敵です。
    政府や自治体の対策だけでは、すべての命を守ることはできません。あなたの命と大切な人々を守るのは、最終的にはあなた自身の「危機意識」と「行動」にかかっています。
  • 地域のハザードマップを他人事ではなく、「自分事」として徹底的に確認してください。あなたの家は、職場は、子供が通う学校は、どのくらいの津波が来る想定ですか?揺れはどれくらいですか?
  • 家族と避難経路を話し合い、実際に歩いてみてください。夜間や悪天候時、道路が寸断された場合など、複数のシナリオを想定していますか?
  • 最低3日分、できれば1週間分の備蓄を今日から始めてください。水、食料、簡易トイレ、常備薬、懐中電灯……。リストアップして、すぐに用意できますか?
  • そして何より、地震の揺れを感じたら、「揺れたら即避難」という、命を守るための行動を、日頃から意識し、訓練してください。
    歴史の教訓から目を背けず、来るべき危機に備える危機意識を、今こそ最大限に高めましょう。あなたの今日からの行動が、未来を変える唯一の希望です。
    あなたにとって、この「来るべき巨大災害」は、もはや「いつか」の話ではありません。それは「今日」にも起こりうる、あなたの現実です。