イトーヨーカドーの上に家が建つ? 都心の再開発を支える「人工地盤」の秘密


先日、X(旧Twitter)で流れてきた「イトーヨーカドーの上に家が建つ?」という面白いポストがきっかけで、都市の再開発について深く掘り下げてみることに。調べてみると、そこには私たちの想像を超える、驚きの技術と都市計画がありました。
今回のブログでは、この面白い疑問から出発して、都心で進む再開発の裏側にある「人工地盤」という技術について、わかりやすく解説します。
「イトーヨーカドーの上に家が建つ?」の真相とは?
事の発端となった疑問、「イトーヨーカドーの上に家が建つ?」。これに対する答えは、正確には「はい、建つこともあります。ただし、屋上ではなく『人工地盤』の上に」となります。
例えば、東京都新宿区にある大規模複合再開発プロジェクト「富久クロス」がその典型例です。かつてイトーヨーカドー新宿富久店(旧)があった場所を含む広大なエリアに、地上55階建てのタワーマンションを中心に、商業施設、保育施設、そして戸建て風の住宅「ペントテラス」が建設されました。
この「ペントテラス」こそが、「イトーヨーカドーの上に家が建つ」と誤解されがちな部分です。実際には、商業施設棟の屋上にあたる部分に、人工的に強固な「地面」を作り出し、その上に戸建て風の住宅が建てられているのです。都心にいながら専用庭付きの戸建てのような暮らしができる、非常にユニークで希少な住戸となっています。
都市の隠れた立役者「人工地盤」って何?
「人工地盤」とは、簡単に言えば、建物の屋上や高架の道路・線路の上など、本来地面ではない場所に、人工的に作られた安定した「地面」のことです。
なぜ、わざわざ高額な費用をかけてまで、このような珍しい地盤を作るのでしょうか?
主な理由は以下の通りです。

  • 空間の有効活用: 土地が限られた都心部で、商業施設や交通施設の上部に住宅や公園などの空間を創り出すことで、土地を最大限に有効活用できます。
  • 快適な住環境の創出: 地上の喧騒から距離を置き、静かで落ち着いた住環境を提供できます。都心で庭付きの戸建てを実現するには、人工地盤が不可欠な場合が多いです。
  • 都市機能の向上: 交通の立体分離(人と車の動線を分ける)や、緑豊かな公共空間の創出など、都市全体の機能性や住みやすさを向上させる効果があります。
  • 災害対策: 強固な構造体として、地震の揺れを軽減する免震構造や、洪水対策としての排水システムなどを組み込むことも可能です。
    富久クロスの例で言えば、商業施設の上に人工地盤を築くことで、都心の一等地でありながら、タワーマンションの利便性と戸建ての快適性を両立させるという、革新的な住環境を実現しているわけです。
    高額な費用、それでも人工地盤が作られる理由
    想像に難くないですが、人工地盤の建設は、通常の建築物に比べて非常に高額な工事費がかかります。強固な構造体の構築、複雑な施工技術、そして既存施設との連携など、多くのコスト要因があるからです。
    しかし、それでも人工地盤が作られるのは、それに見合うだけの高い価値が生まれるからに他なりません。都心の一等地で土地の利用効率を飛躍的に高め、経済効果を最大化できるだけでなく、都市機能の向上、そして何よりそこで暮らす人々の生活の質を高めるための、未来への投資と位置づけられているのです。
    京都にも人工地盤はあるの?
    「人工地盤」というと、東京のような大規模な再開発をイメージしがちですが、実はここ京都にも人工地盤は存在します。
    特に代表的なのが、京都駅周辺です。広大な京都駅ビルは、鉄道施設の上空を覆うような構造になっており、駅ビル内のホテルや百貨店、劇場などは、鉄道施設の上に構築された人工地盤的な空間の上に成り立っています。駅ビル屋上の「空中経路」や「大空広場」なども、まさに人工地盤上に設けられた空間の典型例と言えるでしょう。
    また、京都駅北側の駅前広場(烏丸口)も、地下に駐車場や地下街があり、その上部に広場が広がっているため、実質的に人工地盤の要素を含んでいます。歴史的な景観が重視される京都でも、限られた敷地を有効活用し、交通インフラを整備するために、人工地盤の技術が活用されているのです。
    普段何気なく目にしている都市の風景も、少し視点を変えてみると、そこには私たちの暮らしを豊かにするための様々な工夫や、知られざる技術が隠されていることがわかります。今回のブレストのように、日常の小さな疑問から、都市の大きな秘密が明らかになるのは、とても面白い体験ですね!